ジンが連れてこられたのは、クレマチス家から自転車で5分ほどの場所にある家電量販店だった。 二階建てで定額ショップもあるその店は、入り口にヒーターや、エアコンのデモ機が並び、沢山のテレビから流行りのドラマやワイドショーが続きを読む
カテゴリー: 本編
第四十二話:平民と貴族
「正直な所、六名も要らないのだが……」「ですよね……」 カレンデュラ領での初めての朝、メリエの手伝いの元、身支度を整えたカナト・アークヴィーチェは、別宅の入り口で待機していた騎士達に困惑していた。 特別護衛隊副隊長、セ続きを読む
第四十一話:魔術師カナト
その日は晴天だった。 冬の気候、未だ肌寒い空気の中で午前の空は青く冴え渡り、日差しの暖かさが人々を癒している。そんな爽やかな朝の宮殿で、王子キリヤナギは正装を纏い謁見室へと足を踏み入れていた。 玉座へと腰掛ける父の元へ続きを読む
第四十話:タチバナの滅び
広い会議室に、その日も三人の騎士が揃っていた。現れた王は、桜紋を背にする席へと座り、騎士は着席を待ってからゆっくりと頭を上げる。 「三人とも悪いな」「とんでもございません。陛下」 タチバナ、ミレット、ストレリチアの3続きを読む
第三十九話:カレンデュラへの道
冬が本場となり空気も凍りつくオウカの国は、未だ年の明けた活気に溢れ都市には僅かに飾りが残っていた。仕事へと向かう国民達が都市を賑やかにする首都クランリリーで、王立の桜花大学院もその週から校舎を開放し、サークル活動をする続きを読む
第三十八話:その年の決意
冬が本場となり池の表面が凍りつく気温を観測したその日は、数名の騎士達が屋内演習場へと集まっていた。 2台のストーブが焚かれ、会議机が準備された空間は、学校の体育館ほどの広さの演習場は熱が行き渡らないまま冷え込み、コート続きを読む
第三十七話:騎士団の花
第37話 126 秋に開催された騎士大会がおわり、季節は雪が予報される冬となっていた。 平常業務へと戻った騎士棟では、間も無く年末年始の休みを控え、皆がそれに向けた業務へ励むため多くの騎士達が行き交っている。 そんな宮続きを読む
第三十六話:騎士たちの安息
日が暮れゆくオウカの国にて始まった表彰式は、金のトロフィーとメダルが輝き優勝者を讃えていた。 メンバーが変わってもなお優勝をおさめた宮廷騎士団は、今季もその圧倒的強さを見せつけ、自分達の価値が不動なものであると証明する続きを読む
第三十五話:新世代の才能
グランジは、静かな公園のような場所を1人ゆっくりと歩いていた。第一演習場。またの名を旧狩猟場は、かつての王家の狩猟場として開拓され、そのままの自然が残されている場所でもある。 そこには管理用の建物もあれば、舗装された道続きを読む
第三十四話:異国の武器
駅前へ向かうタクシーの中で、キリヤナギはデバイスの時計を確認しながら焦っていた。もう10分も掛からず駅へと着くはずだが、駅前は信号や自動車の通りが多く、思うより早くは進まない。しかし、ここから走ってもまだ自動車の方が早続きを読む