第四十三話:過去を探して

 ジンが連れてこられたのは、クレマチス家から自転車で5分ほどの場所にある家電量販店だった。 二階建てで定額ショップもあるその店は、入り口にヒーターや、エアコンのデモ機が並び、沢山のテレビから流行りのドラマやワイドショーが続きを読む

第四十二話:平民と貴族

「正直な所、六名も要らないのだが……」「ですよね……」  カレンデュラ領での初めての朝、メリエの手伝いの元、身支度を整えたカナト・アークヴィーチェは、別宅の入り口で待機していた騎士達に困惑していた。 特別護衛隊副隊長、セ続きを読む

第四十一話:魔術師カナト

 その日は晴天だった。 冬の気候、未だ肌寒い空気の中で午前の空は青く冴え渡り、日差しの暖かさが人々を癒している。そんな爽やかな朝の宮殿で、王子キリヤナギは正装を纏い謁見室へと足を踏み入れていた。 玉座へと腰掛ける父の元へ続きを読む

第三十八話:その年の決意

 冬が本場となり池の表面が凍りつく気温を観測したその日は、数名の騎士達が屋内演習場へと集まっていた。 2台のストーブが焚かれ、会議机が準備された空間は、学校の体育館ほどの広さの演習場は熱が行き渡らないまま冷え込み、コート続きを読む

第三十四話:異国の武器

 駅前へ向かうタクシーの中で、キリヤナギはデバイスの時計を確認しながら焦っていた。もう10分も掛からず駅へと着くはずだが、駅前は信号や自動車の通りが多く、思うより早くは進まない。しかし、ここから走ってもまだ自動車の方が早続きを読む