それは数年前のカンナ歴14年の春だった。 男性ばかりの中等教育の場、男子中学へ通っていたヴァルサス・アゼリアは、無事3年間の義務教育を終え、オウカ町の隣にある「梅の木高等学校」へと進学を果たしていた。 この「梅の木高等続きを読む
カテゴリー: 本編
第七話:光の裏の影
「はぁー、また負けたぁ……」「残念だったな」 講堂で行われた生徒会の再選挙は、開票におよそ1時間近くかけ、ルーカスがイツキへダブルスコアを取る形で決着した。 これにより生徒会は現状維持され、ルーカス・ダリアが続投。ホウ続きを読む
第六話:再選挙
本格的な梅雨入りが予報された首都クランリリーは、どんよりとした雨雲に覆われて湿った空気のまま朝を迎えていた。 その日も一限から登校したキリヤナギは、正門に入る前からアレックスと待ち合わせ、常駐となったジンと共にツバメ・続きを読む
第五話:ルドベキア
直撃を受けるとキリヤナギが腰を落とした時、その間に滑り込む影があった。革製の鞄でバットを受け止めたのは、黒のジャケットの男性生徒。 彼は、バットで殴りにきた生徒を蹴り上げて引かせキリヤナギの腕を掴む。 「アステガ!」「続きを読む
第四話:改革の痛み
「こんな品のない場所で密会とは、よく考えたものだね」「ゴミを持ってきただけなんだけど……」 必要である場所を「品がない」というホウセンカは、以前会った時よりも高慢な態度を見せ三人の元へと歩み寄る。 授業が間近の庭には、続きを読む
第三話:不良貴族
朝の日差しがガラス越しに降り注ぐ空間は、外の庭園にはなかった植物が植えられていて多くの緑に染まっていた。 水も通されていた屋内庭園には、水草なども栽培されていて、小さな池には金魚などの淡水魚が泳いでいる。 見たことのな続きを読む
第二話:学内ヒエラルキー
正午前の桜花大学に登校したキリヤナギは、校内に漂う不穏な空気へ違和感を覚えていた。 誰もが声を響かせないよう振る舞い、不安そうな面持ちを見せるのはまるで何かに怯えているようにも見える。 「王子、これやるよ」「え??」 続きを読む
第一話:敗北、原点回帰
春が終わりを迎えつつある頃、澄み渡る青い空は、新しい季節の到来を示しているようにも見えた。 桜花国の首都クランリリー領は、週の初めに開催された王子誕生祭を終え、人々は祭典の後の片付けへと勤しみ日常へと戻ってゆく。この国続きを読む
第五十五話:騎士大会・個人戦
青く澄んだ空の元、その日は訪れていた。 年に一度、春生まれの王子の為に開催された誕生祭は、宮殿での公開挨拶から始まり、人々は若く凛々しい彼へ釘付けとなりながらその言葉へ耳を傾けていた。 去年とは違ってパレードはなく。続きを読む
第五十四話:ツツジとタチバナ
最後に会ったのは数年前の春だろう。 桜が咲き、皆が再会と別れを経験する季節に、私は久しぶりに「彼」と再会した。 親同士が勝手に決めた婚約は、まだ成人しない私達にとって早すぎて、時々道で顔を合わせては挨拶をしていた記憶し続きを読む